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ほんしゅ堂のブログ

東京都練馬区にある酒屋の店主ブログです。

「無添加山廃って?」不老泉の紹介(1)

みなさん、こんにちは。

三連休、いかが過ごされましたかー。

花粉が凄かったので、家でのんびり過ごされた方も、多いかったのではないでしょうか。

私は、幸い花粉症になったことがありませんが、

先日、知人が目の前で、突然、花粉症になったのはビックリしました。

ところで、花粉症にはヨーグルトが効くって話がありますが、

実は、日本酒の製造には乳酸菌の働きが欠かせません。

てことで、今回はその辺りにも触れながら、

当店でアイテム数の一番多い上原酒造さんの「不老泉」を紹介いたします!

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不老泉といえば、コクのある深い味わいが特徴のお酒で、その個性的な味わい求めて、遠方からわざわざ当店にお越しになるお客様がいるほど、少々、マニア向きなところがあるお酒です。

その個性的な味わいを実現している要因のひとつは、ラベルにも書いてある日本酒古来の製法です。

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さて、この「当社の山廃仕込みには酵母を一切添加しておりません」という文言には、

次の2つの意味があります。

  1. 清酒酵母を添加しておりません。←使用する酵母の話です。

  2. 山廃仕込みという製法を用いて仕込みました。←酒母の作り方の話です。

先ずは、1. 清酒酵母無添加について説明いたします。

日本酒は、単純に言うと、お米をアルコール発酵させたものですが、

その発酵過程においてアルコールを生成するのが「酵母」という微生物です。

酵母とひとくちに言っても、様々な性質の物があり、

その中で日本酒の醸造に適した働きをする酵母のことを「清酒酵母」と呼んでいます。

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(池谷和信編集「生き物文化の地理学(P173)」より転記)

明治時代になり、特に優れた清酒酵母は人工的に培養され、

各酒蔵に頒布されるようになりました。その培養清酒酵母の代表が、協会酵母です。

酵母         特 徴
6号酵母 発酵力が強く、香りはやや低くまろやか、淡麗な酒質に最適
7号酵母 華やかな香りで広く吟醸用及び普通醸造用に適す
9号酵母 短期もろみで華やかな香りと吟醸香が高い
10号酵母 低温長期もろみで酸が少なく吟醸香が高い
11号酵母 もろみが長期になっても切れが良く、アミノ酸が少ない
14号酵母 酸少なく低温中期型もろみの経過をとり、特定名称清酒に適す

日本醸造協会ホームページより転載)

現在では、多くの蔵で目指す酒質に合った協会酵母を使用した酒造りが主流となっています。

それでは、「酵母無添加」というのはどういうことなのか?というと、

協会酵母など、人工的に培養された清酒酵母を添加せずに、

醸造所である酒蔵に浮遊している、あるいは原料に付着した天然の野生酵母で、

アルコール発酵させたもの、ということです。

この野生の清酒酵母のことを、蔵に住み着いてる酵母だから、蔵付酵母とか、家付き酵母と呼んでいます。

以前、新政酒造さんの杜氏さんはブログで、家付き酵母のことをこんな風に書いてました。

今、日本で、全量、家付き酵母で酒を仕込んでいるなんて蔵は聞いたことがありません。 山廃に限って言えば、滋賀の「不老泉」さんが、山廃は全量(*)、家付き酵母で沸かせている と聞いたことがありますが、これだけでもすごい。 山廃をやっている蔵の人間なら想像できると思いますが、 家付き酵母で、きちんとしたクオリティの酒を、安定して提供するなんていうことは、 ぞっとするくらい、難儀なことです。
(引用元:新政酒造蔵元駄文) 

(*)追記:現在は「杣の天狗」など一部の商品に協会酵母を使っています。

有名な方の話なので、説得力あると思って引用させていただいた訳ですが、

ブログに書かれている通り、不老泉の杜氏さんはかなりレベルの高いことをやっているんですね。

とはいえ、協会酵母が配布されるようになったのは明治39年で、それ以前は、どこの酒蔵でも家付き酵母で日本酒を造っていました。

江戸時代に酵母の存在すらわかってない中で、現代と同じ酒造りが確立されていたというから驚きです。

その江戸時代の酒造りに関連するのが、次に説明する「山廃仕込み」という製法です。

長くなりましたので、その(2)へ続きます。